ランニング
サブ3・サブエガを目指すシリアスランナー向け「ADIZERO ADIOS PRO 3」
adidas Running Specialistが語る、前モデルからのアップデート
アディダスは、サブ3やサブエガを目指すエリートランナー向けのレーシングモデル「ADIZERO ADIOS PRO 3(アディゼロ アディオス プロ 3)」を、前モデルから大きくアップデート。
5本骨状カーボンバー「ENERGYRODS(エナジーロッド)」が、これまでの前足部フォーカス仕様から、足全体を網羅するフルレングスへと進化しました。
ADIOS PROのDNAを受け継ぎながら多彩なアップデートが施された一足について、選びぬかれた少数精鋭のスタッフである、adidas Running Specialistの京極かずしさんに、前モデルのADIOS PRO 2と比較しながら徹底解説してもらいました。
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「ADIZERO ADIOS PRO 3」は前モデルのADIOS PRO 2と比べて、どのような機能がアップデートされたのでしょうか?
- 京極
前モデルから変わった点は大きく二つあります。一つは「ADIOS PRO」モデル最大の特長である5本骨状カーボンバーが進化しました。もう一つは、アッパーの素材がより軽くなった点ですね。こうしたアップデートによって、前モデルより反発性や安定性、フィット感がかなり高まりました。
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5本骨状カーボンバーは前モデルの「ENERGYRODS」から、新モデルの「ENERGY RODS 2.0」へと、どのように進化したのでしょうか?
- 京極
ADIOS PRO 2の場合は、足の五本指の骨に沿ったカーボンバーが前足部のみに内蔵され、かかと部分のヒールプレートと分かれていました。一方で、ADIOS PRO 3は、カーボンバーがかかとまで伸びたフルレングス仕様となり、かかとから接地しても反発を得やすくなりました。
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カーボンバーがかかとまで伸びたことで、シューズの反発にも違いが生まれましたか?
- 京極
個人的な感触ですが、ADIOS PRO 2ではかかとから接地してしまうと、反発を感じにくかったんです。上級者モデルという特性上、シューズの真ん中もしくは前足部でしっかり蹴り出すような走り方でないと、反発を得るのが難しかったと思います。
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ADIOS PRO 3は、かかとから接地してもスムーズに進める感覚があり、足裏全体で反発推進力を得られるようになりました。
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搭載された「ENERGY RODS 2.0」は、一般的なカーボンプレートと比較してどのような点が優れているのでしょうか?
- 京極
一般的なカーボンプレートは一枚板で、接地した瞬間に反発力が生まれてはねるという構造自体に変わりはありません。ただ、エナジーロッドは五本指の骨に沿って造られているため、足の構造になぞって反発するという自然な接地を促せるのが強みですね。
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ミッドソールにもアップデートが施されたそうですね。特長も含めて改良された点を教えてください。
- 京極
前モデルに続き、「LIGHTSTRIKE PRO(ライトストライク プロ)」というクッション性や軽量性、反発性をハイレベルに実現した低密度高反発ミッドソールが入っています。このミッドソールでカーボンバーを挟み込むことで、クッション性を感じさせつつ、推進力を生み出してくれるような構造になっています。
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今回のアップデートでは、この構造を受け継ぎながら、ミッドソール材をやや柔らかく改良して、よりクッション性や疲れにくさを感じられる仕様になりました。
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前モデルと比べて接地した瞬間の感触の違いはありますか?
- 京極
「ライトストライク プロ」は、沈み込みが少ないもちっとした感触が特長で、クッション性を感じた後にすぐ跳ね返ってくるレスポンスの速さが好みでした。
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この感触を気に入ってくださるランナーも多いですね。ADIOS PRO 3は前モデルと比べると柔らかさを感じやすく、なおかつエナジーロッドが全面に伸びているので、反発性を得られながらもブレない安定性も高まったと感じています。
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衝撃を吸収するクッションがより柔らかければ、レース終盤の足の余裕度も変わってくるので、このクッション感はかなりプラスではないでしょうか。
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アッパーのアップデートについても教えてください。
- 京極
より軽くて薄い「ニュースーパーライトメッシュ」という素材に改良されました。前モデルでも薄さは感じられたものの、個人的な感触としては足を包み込むホールド感が弱いかなと感じていたんです。
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ADIOS PRO 3のアッパーはより薄くなった一方で、メッシュ素材が少し硬くなり、足入れした瞬間のガチッとハマる感触が強まりました。激しいランニング動作でも、シューズ内のブレが軽減され、蹴り出すときの安心感が高まったと思います。
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ランニングの際のフィット感をさらに感じやすくなっているのでしょうか?
- 京極
私はADIOS PRO 1とADIOS PRO 2をそれぞれ履いて何度かレースに出場したことがありますが、ADIOS PRO 1のほうがホールド感がしっかりしていて好みでした。ただ、長時間走る距離練習や長い距離を走るときは、より軽いADIOS PRO 2を履く、といったように使い分けをしていましたね。
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新作のアッパーに関しては、ホールド感が増したとともに、さらに軽くなったので、ADIOS PRO 1と2の特長を兼ね備えた“ハイブリッド”なモデルだと感じています。
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ヒール部分のホールド力も高まったそうですね。
- 京極
前モデルにもヒールパッドはありましたが、新モデルはヒールプレートとともに内側外側それぞれに搭載されたレイヤーパーツにより、しっかりとかかとをホールドするつくりになっています。
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また、内側のクッションが前モデルよりせり出しているので、足入れしたときのアキレス腱やかかと周辺のフィット感が高まり、かかとの浮きやブレが軽減されました。
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アウトソールのグリップ力もより高まったそうですが、どのようにアップデートされたのでしょうか?
- 京極
グリップ力と耐久性に優れた「コンチネンタルラバー」の面積をやや広げ、蹴り出しの際のグリップ力がより高まりました。前モデルに続き軽量性に優れたラバーを併用することで、軽さを追求しながら地面にしっかりと力を伝えられるような印象です。ちょっとした変化ですが、0.1秒にこだわるレースの世界では重要なポイントだと思います。
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特にどんなランナーに履いてほしいシューズでしょうか?
- 京極
日頃から記録の更新を目指して走り込んでいるエリートランナー向けです。タイムで言えばサブ3くらいが目安ですが、サブ3.5を目指すようなランナーにも安定感があるのでおすすめできる一足ですね。
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安定感で言うと、サブ4ランナーやフルマラソンではなくハーフや5kmなどでタイムを目指している方にも手にとっていただけるのではないでしょうか。ぜひお店にいらした際に試し履きいただければと思います。
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京極さんは「adidas Running Specialist」の肩書きを持っていますが、どんな役割をもったスタッフなのでしょうか?
- 京極
全店舗のスタッフから特にランニング経験が豊富な7人が選抜され、adidas Running Specialistとしてランニングの知識や情報、シューズの良さを発信しています。私も長くランニングを続けているので、そこで培った経験や知識を他のスタッフに落とし込み、お客様にも還元していくつもりです。
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京極さんのラン歴を教えてください。
- 京極
中学1年から陸上を始めて、ランニング歴は13〜14年ですね。学生時代はフルマラソンにも挑戦しましたが、今は原点回帰でトラック種目の3000mや5000mの記録に挑戦しています。実際に走っているからこそ、そのスピードで走った時の体感をお伝えできるのも強みだと思います。
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adidas Running Specialistから見て、記録を求めるランナーがシューズを購入する際に見てほしいポイントは何でしょうか?
- 京極
反発性を一番にチェックされる方も多いですが、個人的にはフィット感やホールド感を重視してほしいです。自分の足に合っていないといくら推進力があろうが、長時間のランニングで足が痛くなり、継続して履こうと思えなくなってしまいます。
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あとはクッション性も大切ですね。ADIOS PRO 3はこれらの要素をしっかり兼ね備えたシューズだと思います。
プロフィール
京極 和史(キョウゴク カズシ)
フルマラソンBEST: 2時間39分
スポーツシューフィッター'advance'資格所有(日本フットウェア技術協会)
adidasブランドコアストア 新宿勤務
(取材&執筆:荘司結有 編集:ノオト)