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海:プラスチックがもたらす悲しい結末

プラスチックは海を窒息させて、地球を破壊します。
どのようにしてこのような状況に至ったのか?そして、そこから抜け出すために何ができるのか?

プラスチックはどこにでも存在します。食品のパッケージ、電化製品、自動車、玩具、クレジットカード、衣類など。プラスチックは目に見えない所にも存在します。プラスチックは人が住む場所から3,000マイルも離れた無人の海岸に捨てられ、海面下数キロメートルのところで酸素を発生するプランクトンを死滅させ、太平洋のアホウドリの雛の食道を詰まらせます。プラスチックは、人の血管や臓器内といった体の中にも入り込んでいます。

信じられないことに、わずか100年前に開発されたプラスチックは、現在、地球上のあらゆる場所に多く存在する汚染物質の一つとなっています。そして、その一番のダメージを受けているのは、多くのプラスチックが行き着く場所。つまり、海です。プラスチックは、この地球上の大切な資源の1つを破壊し、その結果、地球上の他の部分にも同様に壊滅的な影響を与える可能性があります。プラスチックのない世界はあり得ない、と思うかもしれませんが、プラスチックを使い続けることは死刑を宣告されるのと同じことなのです。海と私たち自身を守りたければ、この現状に至った経緯をよく考え、プラスチック汚染に溺れる前に、かつてないほど増え続けているプラスチックを削減する方法を見つけなければなりません。

プラスチックの歴史

何世紀にもわたってプラスチックは自然な形で存在してきましたが、いわゆる現代の人工プラスチックの出現は、1907年のベークライトの製造にまで遡ります。1920年代から30年代にかけて、材料としてのプラスチックは、PVC(ポリ塩化ビニル)とポリスチレンの工業生産によるものでした。産業分野、そして私たちの生活においては、プラスチックが軽量で安価、丈夫で、さらに用途が無限であることから、考えられるほとんどすべてのものに使用できる材料になりました。そして気がつけば、私たちはプラスチックカップに入った飲み物をプラスチックストローで飲み、購入するものすべてをプラスチック袋に入れるようになっていました。20分後にそれを飲み終えたとき、私たちはすべてのプラスチックを捨てます。今や世界中で年間3億トン以上の新品の未使用プラスチックが製造され、地球上の一人当たりが1トン以上のプラスチックゴミを捨てていることになります。つまり、プラスチックは単なる10億ドル産業ではなく、10億トンの汚染物質となっているのです。

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捨てられたり、飛ばされたり、流されたりして、どこに行き着くのか?

プラスチックの大きな問題は、有機物のように自然に消滅しないことです。プラスチックは分解するのではなく、細かい断片になっていきます。そのため製造されたプラスチックのほとんどすべてが何らかの形で残存しているのです。

では、私たちがそのプラスチックを使わなくなった時、プラスチックはどうなるでしょうか?私たちは可能な限りリサイクルしたいと考えていますが、実際に世界中でリサイクルされているプラスチック廃棄物はわずか10%未満です。残りのプラスチックは、一般ゴミと一緒に捨てられ、焼却されるか、埋め立て地に捨てられるか、あるいは住宅地や街中に捨てられています。行き場のないプラスチックごみは水路に流され、最終的には海にたどり着きます。

世界中の低・中所得国で、ほとんどのプラスチック廃棄物は環境を破壊する可能性が高い方法で処理されています。プラスチック汚染に向けられる意識はほとんど、または全くありません。というのも、廃棄物処理施設が不足し、教育も欠如し、もっと当面の関心事があるからです。次の食事の心配をしなければならない人々にとって、プラスチック廃棄物の問題の優先度は高くはならないでしょう。そうした地域では、プラスチックが水の中に流れ込む経路はもっと直接的です。プラスチックが一度水に入ると、環境に恐ろしいダメージを与えます。

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海がプラスチックゴミで溺れている

1日当たり、毎分トラック1台分ものプラスチックが海に捨てられていることになります。このペースで汚染が続くと、2048年までに魚よりも海中のプラスチック廃棄物のほうが多くなると科学者たちは予測しています。

このプラスチックの多くは海流と風によって破壊されながら、大陸の海岸線から離れた海の中心部へと運ばれます。そこで、プラスチックは「渦(還流)」と呼ばれる凝縮したプラスチックスープの領域に集まります。これらの渦(還流)の最大級のものは、Great Pacific Garbage Patch(太平洋ゴミベルト)であり、フランスの国土の約3倍の面積にわたって何十億ものプラスチックが浮遊しています。時には、渦(還流)が、人の住む場所から何千マイルも離れた無人島の海岸にまで、プラスチックやシャンプーボトル、歯ブラシ、ビニール袋などを「吐き出して」いるかもしれません。多くのプラスチックは海面に残ることはなく、波の下の深いところで汚染を深刻化します。プラスチック粒子は水深5000メートルのところにある深海堆積物から発見されています。さらに、マリアナ海溝の水深10キロメートルという、地球上で最も深い場所でもビニール袋が発見さています。

プラスチックは、海のどの場所で見つかっても、そこに生息する生物に深刻なダメージを与えます。動物たちの頭や口、ひれが、大きなプラスチック片や捨てられた漁網、ロープに引っかかってしまいます。最近の調査によると、海洋哺乳類の3種のうちの1種がこれらのプラスチック製の縄に巻き込まれていることがわかりました。調査では、230種類以上の海洋生物の胃の中にプラスチックが発見されています。このような場合、プラスチックは消化されず、動物の腹の中に溜まるため、ゆっくりとした飢餓につながります。

また、水中では、紫外線と浸食によりプラスチックの分解が加速し、細かいプラスチック片になっていきます。これらのマイクロプラスチックの大きさは、米粒からマイクロメートルの数分の1までと、さまざまです。大きさに関わらずプラスチックが海の生物に飲み込まれると、それらは消化器官を通って動物の血流に流れ込み、生殖能力の低下、臓器の損傷、さらには生命を脅かす可能性があります。そして、今、海の生物に害を与えているものは、すぐに私たちにも害を与える可能性があります。英仏海峡の魚の3分の1は血液中にマイクロプラスチックを含んでいることがわかりました。ムール貝を食べるヨーロッパ人は、毎年6,400個のマイクロプラスチックを摂取することになると計算されます。私たちはこのプラスチックを食べることで起こる健康への影響をよく知らない一方で、それが私たちの責任で起こっていることを知っています。幸い、私たちは物事をより良い方向に変えるための鍵を握っています。

プラスチック汚染への取り組み

世界はついにプラスチック汚染の深刻さに目覚めつつあります。近年、ますます多くの企業、組織、政府機関がこの問題に取り組み、私たちの生命を脅かすプラスチック問題の解決策を模索しています。

この問題に対処する1つの方法は、プラスチックの使用を完全に禁止することです。サンフランシスコ市は、2014年に市の所有施設や敷地内でプラスチックバッグやペットボトルの販売を禁止することを発表しました。他の地域や国々もこれに続いて活動しています。ケニアでは、プラスチックバッグを販売している人に、裁判所が38,000ドルの罰金を科すことができます。太平洋の真ん中に位置するバヌアツでは、政府が使い捨てプラスチックを廃止する法案を可決しました。

他のアイデアとして、材料自体を作り変える方法があります。たとえば、世界最大の玩具メーカーの一社は、植物を原料として作られた生分解可能なプラスチックの開発に1億5000万ドル以上を投入しています。この開発では、昨年、サトウキビを原料とするプラスチックから作られた最初の製品ラインが発売されました。

また、海洋からプラスチックを大規模に除去することができる装置も試作されています。しかし、そのようなアプローチはまだ立証されていないため、いずれ効果があるとしても、現在の速度でプラスチックを水の中に廃棄し続けるのであれば、それは砂嵐の中で掃除機をかけようとするのと同じことです。いくら取り除いても、それだけで問題を食い止めることは不可能です。

他には、スウェーデンの女子高生グレタ・トゥーンベリさんにインスパイアされた学生たちによる、気候変動ストライキなどの草の根運動があります。これは環境問題に立ち向かう人々の思いを表しています。若い人たちは、自分たちの未来と地球の将来について発言する機会を求めています。そして、自分たちが望む変化を加速するために結集し、行動しようとする積極的な意志を示しています。

これら個々の取り組みは、プラスチックに汚染された海においてはほんの小さなことかもしれませんが、それぞれが互いに影響を与えあい、私たちが直面する問題に対する意識を高め、さらに多くの人にプラスチック汚染に対して取り組んでもらうきっかけとなるでしょう。より多くの人がそうした活動をすることで、より良い方向へ向かっていきます。

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アディダス VS プラスチック

アディダスは、ブランドとして、環境問題の取り組みに関して影響力があると確信しています。アディダスは、創造力と想像力によって、環境負荷を減らし、プラスチック廃棄物をもっと便利なものに変える方法を見つけました。環境保護団体のParley for the Oceansと共に、海洋のプラスチック廃棄物をプロダクトの原料として使用するという課題に取り組み、2015年にニューヨークで開催された国連で最初のコンセプトシューズを発表しました。シューズのアッパーは、海洋のプラスチック廃棄物や違法な深海漁網から回収され、リサイクルされた糸や繊維で作られました。以来、アディダスは、世界中の離島、海岸、そして沿岸のコミュニティから回収されたプラスチック廃棄物を原料とするさまざまなウェアやシューズを開発してきました。こうしたプラスチック廃棄物はParleyと、その世界規模のクリーンアップネットワークによって回収され、洗浄され、織糸に加工。シューズやアパレルなどを作るために使用されます。2016年に第1世代のadidas x Parley製品が発売されて以来、私たちは海洋プラスチックゴミを原料とした500万足以上のシューズを生産してきました。そして2019年にはさらに1,100万足を製造する予定です。この活動により、1,400トン以上のプラスチックゴミが海へ流出するのを阻止できたことになります。アディダスは一企業として、プラスチックの無い未来に向けて取り組んでいます。私たちはプラスチックに代わる新しい材料を模索しており、2024年までにアディダス製品に含まれるすべての未使用ポリエステル(代替品がある場合)を段階的に廃止することに取り組んでいます。また、店頭のプラスチックバッグを廃止し、すべてのボディソープからマイクロビーズを排除。各国のオフィスではプラスチックの使い捨てを禁止しています。

また、プラスチック汚染に取り組む鍵は教育にあると確信しています。2017年以来、アディダスが主催する毎年恒例のRun For the Oceans(RFTO)イニシアチブは、スポーツの力を借りてプラスチックの問題に対する意識を高め、世界中で行動を起こす役割を担っています。参加者が1キロ走るごとに、Parley Ocean Schools の教育プログラムに1ドルが寄付されます。このプログラムは、海を守ることの重要性、プラスチックゴミの問題、そして環境と調和して生きるための行動について若い人々を教育することで、健全な海とクリーンな地球のための取り組みにおいて将来を担う世代に力を与えます。

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未来は私たちの手に

この破壊へのシナリオを回避するために、私たちはプラスチックの製造と使用を止めなければなりません。未だに使い捨てプラスチックを消費し、未使用プラスチックで作られた製品を購入しているのであれば、自分たちの環境を破壊し、寿命を短くしていることになります。

難しい挑戦に思えるかもしれませんが、必要とする変化を推進するために、私たちにもできる簡単な行動があります。 使い捨てのプラスチックよりも、リサイクルしたプラスチック製品を選択すること。または、できれば日常生活でプラスチックを使用しない。海岸や川、公園、街中からプラスチックごみを回収する。プラスチックのない未来に向けて取り組んでいる政治家、政府、そして企業を支援し、そうでない人々や団体には支持しない。想像力とコラボレーションによって、より良い世界を創造するために協力すること。

これらは取るに足りないことのように思えるかもしれませんが、何百万人もの行動が大きな影響力になるのです。周りの人にも参加を促し、一緒にプラスチック汚染の終わりに向けた活動を始めましょう。私たちの海、私たちの地球、そして私たち自身のために。

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