20191204-_KP_9723.jpg

【図説つき】ランニングで起こりやすい2種類のケガとその原因とは? 中野ジェームズ修一さんに聞くケガ予防と対策

「体力をつけたいから」「ダイエットをしたいから」など、ランニングの目的は人それぞれ。しかし、ケガをして走れなくなっては、本末転倒です。初心者ランナーに多いケガの種類や、その予防法・対策法について、adidas契約アドバイザーの中野ジェームズ修一さんに伺いました。呼吸が続かないときのトレーニングについても解説していただきましたので、中野さんの写真と合わせてご覧ください。

ランニングで起こりやすいケガの種類 その原因と症状

  • ランナーに多いケガの種類を教えてください。

  • 中野ジェームズ修一(以下、中野)

    一番多いケガは、足底筋膜炎とシンスプリント(過労性脛部痛)ですね。特に走り始めた人に起きやすいケガで、「初心者の二大障害」といわれています。

  • 何が原因でケガにつながるのでしょうか? また、どのような症状が現れますか?

  • 中野

    走るときは、足のアーチを何百回も動かしますよね。走った後にきちんとケアしなければ、足底の筋肉が硬くなり、負担がかかって、炎症が起きてしまいます。これが、足底筋膜炎の原因になります。症状は非常に分かりやすく、朝、ベッドから踏み出した一歩目が痛いと感じたら、足底筋膜炎の可能性が高いです。

    シンスプリントは、走り過ぎが原因で起こる、すねのケガです。脛骨のわきを触ると強く痛むのが代表的な症状。この痛みを放置すると、疲労骨折につながってしまいます。完治するまでに、3カ月ほどかかる場合もあります。

  • シンスプリントの原因は「走り過ぎ」とのことですが、どのくらいの距離を走れば、走り過ぎといえますか?

  • 中野

    月間50km走ると疲労骨折を起こす人もいますし、月間500km走れる人もいますので、難しいところですね。一概に何kmとは言えませんが、一般のランナーの場合、月間200km走ると、ケガの発生率が8割から9割くらいまで上がるといわれています。周りの一般ランナーの方を見ても、皆さんどこかしら体を痛めていますね。

  • 中野

    フィットネスの観点でランニングを行うのであれば、月間80kmをひとつの基準として覚えておきましょう。最初から月間80km走ると、体に負担がかかってしまうので、まずは月間10kmや20kmから始めて、少しずつ距離を増やしていくのがいいですね。

    体に痛みを感じたときに、思い切って走る距離を減らす勇気も必要です。日本人は真面目なので、今月40km走れたら、来月は45km走ろうとするんですよ。でも、今月40km走って体に痛みを感じるなら、来月は35kmにしたほうが、ケガをしないで済みます。長い距離を走るためには、まだまだ時間がかかると考えて、気長に取り組んでいきましょう。

呼吸が続かないランナーにおすすめ! 3種類の動的ストレッチ

  • 足底筋膜炎とシンスプリント以外では、ランニングでどのようなケガや痛みが生じるでしょうか?

  • 中野

    長い距離を走れるようになると、「肩が張る」「腰が張る」「股関節が詰まる感じがする」といった症状が必ず起こります。体のウィークポイントが出てくるんですね。

    走る前に動的ストレッチをすることで、症状の予防・軽減につながります。しかし、走る距離が10km程度の場合は、わざわざ動的ストレッチで時間を取られることもありません。ランニングに入る前にウォーキングで体を動かすことが、動的ストレッチの代わりになるので、それで十分でしょう。

    走るうちに体のウィークポイントが出るという意味では、走り始めから3kmを過ぎたにもかかわらず「呼吸が苦しくて走り続けられない」というのもあります。それを防ぐためには、胸と背中の筋肉をほぐす動的ストレッチを行うことで、胸郭の動きがスムーズになり、長く走り続けられるようになります。途中で呼吸が苦しくなってしまう人に向けて、胸郭の動的ストレッチを3種類お教えしましょう。

  • 20191204-_KP_9598.jpg
  • 中野

    枕かタオルを頭の下に敷き、横向きに寝て膝を曲げます。両手を伸ばして重ね合わせます。

  • 20191204-_KP_9602.jpg
  • 中野

    左腕を真上に伸ばし、胸郭を広げるように、さらに角度を広げて伸ばします。

  • 20191204-_KP_9604.jpg
  • 中野

    肘が床に近づくところまで伸ばします。腕を開き切ったら、逆向きになり、右の胸郭も同じように動かします。

  • 20191204-_KP_9606.jpg
  • 中野

    続いて、四つ這いの姿勢からのストレッチ。四つ這いになり、左腕を曲げて左手を耳に当てます。

  • 20191204-_KP_9608.jpg
  • 中野

    地面と平行になるように左肘を伸ばします。

  • 20191204-_KP_9610.jpg
  • 中野

    左肘を顔より高い位置まで上げて、胸郭を動かします。

  • 20191204-_KP_9617.jpg
  • 中野

    次も同じような動的ストレッチですが、胸郭をより広げることを意識しましょう。先ほどと同じく四つ這いになり、左腕を曲げて左手を耳に当てます。

  • 20191204-_KP_9618.jpg
  • 中野

    地面と平行になるように左肘を伸ばします。

  • 20191204-_KP_9620.jpg
  • 中野

    左腕を伸ばして胸郭を広げ、指の先に目線を送ります。

  • ケガの予防として、体のケア以外にできることはありますか?

  • 中野

    体の負担を軽減してくれるシューズを選ぶことが大切だと思います。adidasのシューズには、高いクッション性と反発性を両立するブーストフォームが搭載されていますが、衝撃を吸収してくれるのでおすすめです。海外旅行で長時間歩くときも、ブーストフォーム搭載のシューズを履いていると、体が楽ですよ。ストレッチや筋トレだけでは防げないケガもあるので、シューズ選びは慎重にしていただきたいです。

距離やタイムより「気持ちのいいランニング」を目指そう

「一般ランナーのみなさんには、痛みもケガもない、気持ちのいいランニングを目指してほしい」と中野さんは話します。目標を一つ達成すると、次はより高い目標を目指したくなりますが、ケガをすれば、ふりだしに逆戻りする可能性も。脚に違和感はないか、体に痛みが生じていないかなど、自分の体を冷静に見つめる習慣をつけましょう。

取材対象者プロフィール:
中野ジェームズ修一さん
スポーツモチベーション最高技術責任者
米国スポーツ医学会認定運動生理学士
PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー

フィジカルを強化することで競技力向上や怪我予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。2014年からは、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。早くから「モチベーション」の大切さに着目し、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとしても活躍を続けている。自身が技術責任者を務める東京神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、「楽しく継続できる運動指導と高いホスピタリティ」が評価され活況を呈している。

(取材&執筆:東谷好依 撮影:藤原慶 編集:ノオト)

会員登録すると
10%OFFクーポンプレゼント
iconCross