サッカー
FIFAワールドカップ™のボールにまつわる歴史~ゲームチェンジャーとなるまで
FIFAワールドカップ™に名を残した選手、マネージャー、チームのことなら、話の尽きないファンが大半だろう。だが、試合でのプレーに大きく影響するものがもう一つある。FIFAワールドカップ™で使われるボールそのものだ。
FIFAワールドカップ™公式試合球として歴史を刻んできたアディダスボール
ひもが使われた1930年代の重みのある皮製ボールと、2022年のFIFAワールドカップ™の最新ボールでのプレーはどのように違うだろうか。ボールの材質が良くなり、テクノロジーが進化したことで試合も様変わりした。ボールを操る技術、スピード、そこから沸き起こる歓喜は、ボールの進化と共にあるといってもよい。これはFIFAワールドカップ™にとどまらず、サッカーの試合全般に言える。
FIFAワールドカップ 2022™で使用されるボールとは
FIFAワールドカップ 2022™の試合球は、アディダスが14大会連続で製作を担当する。Al Rihla (アル・リフラ:アラビア語で「旅」を意味する) と名付けられたこのボールは、ワールドカップの過去90年の変遷を如実にあらわす。アル・リフラはFIFAワールドカップ™の試合球の中でも最高の飛行速度を実現し、サステナビリティがより配慮されている。
また、FIFAワールドカップ™初となるコネクテッドボール技術も採用される。すなわちボールにモーションセンサが搭載され、あらゆる動きを追跡する。そこで得たデータはビデオアシスタントレフリー (VAR) に送信され、オフサイドの判定などに役立てられる。
アル・リフラは92年におよぶワールドカップの歴史で初めて寄付活動を実施する。世界中の人々にプラスの影響を与えるためだ。
「アル・リフラの売上収益の1%を寄付し活動を支援することで、共通のゴールに引き続き取り組んでいくことを誇りに思う。同時にサッカーを軸に社会的な変化につなげ、若者たちの暮らしによい影響を与えたい」とアディダスフットボール担当ジェネラルマネージャーのニック・クラッグスは述べている。
FIFAワールドカップ 2022™のボールはどこで作られるのか
ボールの製造技術と専門知識に昔から長けているのは、まちがいなくパキスタンだ。パキスタンでの製造は、3大会連続となる。
FIFAワールドカップ™の試合では、対戦チーム、試合日、会場ごとに異なるボールが使われる。こうした試合球は、ほどなくコレクターの手に収まるものもあれば、試合関係者やハットトリックを達成したプレーヤーに与えられるものを除き賞品として提供され、ラッキーなファンが獲得することも多い。カタールの後に繰り広げられる試合球のゆくえに目を凝らしてみよう。
FIFAワールドカップ™でのアディダスボールの歴史
1930年の初の公式大会から1966年のロンドン大会まで使用された試合球は、今見るものとは似ても似つかず、重みのある茶色のレザーを縫い合わせたものだ。ボールの色はTV放映の普及にともない変化することになる。白黒TVでは茶色のボールは見づらかったからだ。
第1回大会の決勝となったウルグアイ対アルゼンチン戦は、2種類の試合球が使われる異例のケースだった。両チームでどちらを試合球にするか決めきれなかったため、前半戦はアルゼンチンが選んだTientoでプレーした。後半戦は重いTモデルでのプレーとなり、Tモデルを選んだウルグアイが勝利を収めた。
1970年に初めて提供を求められて以来、アディダスはすべてのFIFAワールドカップ™の試合球を製造している。ここでは型破りなモデルの一部をご紹介しよう。
2018年 TELSTAR (テルスター)
アディダスが1970年大会で初めて公式試合球として製作したテルスターは、2018 FIFAワールドカップ™にも再び登場。この大会ではフランスがクロアチアと対戦して勝利した。2018年のボールはFIFAワールドカップ™の象徴とも言える白黒の五角形と六角形をピクセルデザインにリニューアルしている。リサーチの中でサッカーボールのイメージを描くよう求めたところ、99%がテルスターと似たボールを描くほどこのイメージは浸透している。
2014年 BRAZUCA (ブラズーカ)
FIFAワールドカップ 2014™の試合球となったブラズーカでは初めてTwitterのアカウントを開設。ソーシャルメディアをうまく活用したことで、最大フォロアー数276万人を獲得した。南米での大会で欧州勢が初めて優勝し、リオデジャネイロで開催された決勝ではドイツがアルゼンチンから1点をもぎとった。
ブラズーカは、3大陸10か国で600人以上のプロプレーヤーによるテストを経て大会でのキックボールとなった。これはアディダスがこれまで手がけた中で最も多いテスト回数だ。
2010年 JABULANI (ジャブラニ)
FIFAワールドカップ™で最もよく知られている試合球は、2010年大会のジャブラニだろう。熱で接着させた8枚のパネル (FIFAワールドカップ™の前大会で使用した14枚から削減) で、これまでになく丸みを帯びている。
ジャブラニはズールー語で「祝う」を意味する。この言葉にまさしく値するのが同大会で通算5得点を挙げたトーマス・ミュラーだ。ミュラーには得点王としてゴールデンブーツ賞が授与された。
決勝戦の場で、ジャブラニは好敵手とやりあうことになる。スペインのゴールキーパーでキャプテンでもあったイケル・カシージャスは、オランダのアリエン・ロッベンが放ったシュートに対して2度の好セーブを果たした。カシージャスはゴールデングローブ賞に選ばれ、スペインがFIFAワールドカップ™の優勝国となった。
2006年 +TEAMGEIST (チームガイスト)
FIFAワールドカップ 2006™の試合球となったチームガイストは、サッカーボールの歴史を塗り替えたといえるだろう。チームガイストは、14枚のパネル (従来は32枚) を縫い合わせずに熱を利用して接着しており、ストライカーがどこからでもシュートを放てることを目指して作られた。また2006年の大会から、FIFAワールドカップ™の決勝戦で試合球に特別なバージョンを使用する慣例が生まれた。
フランスとイタリアで繰り広げられた記憶に残る熱戦で、+Teamgeistは注目を浴びることになる。その精度と軌道の高さは、イタリアのファビオ・グロッソがPKを決めてフランスに勝利する形で示され、大会はドラマチックな結末を迎えた。
2002年 FEVERNOVA (フィーバーノヴァ)
FIFAワールドカップ 2002™のフィーバーノヴァは、従来の白と黒のデザインから大きく姿を変えている。カラフルなパターンはアジアの文化をモチーフとしており、内層には特殊なフォームレイヤーを採用し、軌道の予測性を高めた。その結果、素晴らしいゴールがいくつも生まれ、決勝戦ではロナルドがドイツのオリバー・カーンのファンブルを押し込んでブラジルの勝利を確かなものにした。
1986年 AZTECA (アステカ)
FIFAワールドカップ 1986™で使用されたアステカは、かの有名な「神の手」に手を貸すことになった。アルゼンチンのマラドーナが手でボールをパンチして、イングランドのゴールキーパーであったピーター・シルトンの頭上を抜きゴールを奪った事件だ。その後マラドーナは目の覚めるような個人ゴールで追加得点を挙げて、この事件を有名無実のものにした。
1978年 & 1982年 TANGO (タンゴ)
1978年と1982年のFIFAワールドカップ™大会で使われたタンゴは、20枚の薄膜パネルを手で縫い合わせ、防水加工が施された。パッと見て分かる三角マークで表面に白の円がかたどられ、プレーヤーはこれを頼りにボールの回転を見きわめた。
この2大会で使用されたFIFAワールドカップ™ボールは、今も伝説として語り継がれている。とりわけ1982年大会では、44年にわたり優勝に縁がなかったイタリアが西ドイツからトロフィーを勝ち取った。
アル・リフラ登場
11月20日が近づくにつれ、興奮も盛り上がりつつある。決勝戦のホイッスルが鳴る12月18日には、いくつもの答えが明らかとなるはずだ。かの有名な優勝トロフィーを掲げるのはどのチームか? ゴールデンブーツ賞を獲得するのは誰か? そして、すべてを極めたアル・リフラがどのようなプレーを演出し、サッカーの歴史を刻むのか? 待ち時間は、まもなく終わる。
試合のドラマが繰り広げられるそのときまで、FIFAワールドカップ™のアディダスシューズの記事を読み、FIFAワールドカップ™のクイックガイドにアクセスしてその日を待とう。そうすればプレーヤーたちと同様、大会までの備えは万全だ。