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ジョギングの嬉しい効果と正しい走り方は?継続のコツを中野ジェームズ修一さんが解説

画一的なワークスタイル・ライフスタイルから、より自由な時間の使い方が尊重されるようになった昨今。家で仕事をする人や、勤務時間に縛られない人、住む場所にとらわれない人など、それぞれの価値観に基づいた暮らしかたが実践されています。

暮らしにフィットした健康管理もまた注目の的となり、健康や美容のために運動を始める人、始めたい人が増えています。街中でジョギングをしている人を見かけることも増えました。

少しでも課題意識や向上意欲が芽生えているなら、新しいことにチャレンジするチャンス。今回はジョギングを検討している人に向けて、得られる効果を具体的にお伝えしていきます。

ご登場いただくのは、adidas契約アドバイザーの中野ジェームズ修一さん。トップアスリートのトレーナーとして数多くの実績をお持ちで著書も多数。この記事では、ジョギングの効果やランニングとの違い、ダイエットや継続のコツなど、人々が抱きがちな疑問にご回答いただきました。

そもそもジョギングとは?ランニングとの違いや速さについて

ジョギングのような走る運動には様々な呼称がありますが、特に区別をつけづらいのがランニングとの違い。同じように見えて、実は明確な違いが存在します。正しい意味を理解していれば、運動の効果も高まるはず。まずはその定義についてお答えいただきました。

Q ジョギングとランニングにはどのような違いがあるのでしょうか?

「ジョギングとランニング、2つの言葉は私たちトレーナーも使い分けしています。大きな違いは、健康向けの運動としておこなうか、競技向けのスポーツとしておこなうかという点です。まずランニングはスポーツ的な要素が大きく、早いスピードで走ることが求められます。一方でジョギングは比較的ライフスタイルの中に取り入れられたものです。あくまでニコニコしながら続けられる、ゆっくりペースで走りましょうという趣旨ですね。
また、ランニングの場合は空腹時に行うとエネルギー切れを起こしたり、人によっては糖質を摂り過ぎて血糖値が急激に下がるインスリンショックを起こし低血糖になったりする場合があります。ジョギングはそういったことをあまり気にせずに行える運動でもあります」

Q ジョギングとランニングを区別する、強度について教えてください?

「強度の尺度は様々ありますが、ここではスピードが焦点となります。目安としているのは、時速8キロ(7分30秒/1キロメートルあたり)を1日に30分程度。早歩きよりも少し早いくらいのスピードで走ることをジョギングと呼ぶことが多いです。厳密には、対象者が誰になるかによってジョギングのペースは異なります。トップアスリートにとっては時速12キロでもジョギングペースに相当するでしょう。これからジョギングをはじめる初心者の方は、まずは時速8キロ(7分30秒/1キロメートルあたり)を1日に30分程度を目安に考えていただくのがいいと思います」

ジョギングが体に与える嬉しい効果

新しい運動をはじめるなら、どんな効果が期待できるのかをあらかじめ知っておきたいもの。漠然とジョギングをスタートするよりも目標を据えていた方が、モチベーションにもつながります。どのような効果を意識して走るべきなのか、お答えいただきました。

Q ジョギングの効果にはどのようなものが挙げられますか?
「ジョギングの効果は大きく3つで、免疫力の向上、血糖値のコントロール、メンタルの向上です。それぞれ詳しく解説していきますね」

Q まずは免疫力の向上効果ですが、なぜジョギングが免疫に影響を与えるのでしょうか?
「世界保健機関(WHO)が2020年にリニューアルしたガイドラインによると、一般的な成人が健康を維持するためには、1週間で150分以上の運動をする必要があると記載されています。ポイントは、運動の内容は中強度の有酸素運動とされている点です。運動に慣れてくると、より負荷をかけようとしてしまいがちですが、必ずしもそれが免疫の維持につながるとは限りません。健康三次被害という言葉がありますが、 オーバートレーニングによって体が弱ると、免疫が低下する原因になります。実際、より強度の高い運動をした人よりも、ジョギングを続けている人の免疫が高くなる傾向にあるんです。ですからもしも免疫力の向上を目的にジョギングをはじめるなら、ハートレート(最大心拍数に対する心拍数の割合)を50〜80%ぐらいにキープできる強度でおこなうのがベターですね」

Q 血糖値のコントロールについて、仕組みや効果について教えてください
「まずは食後の血糖値上昇と糖の行き先についての仕組みをお話していきますね。食事をすると胃から吸収された糖が血液に流れ込みます。血液中の糖が最も増える“高血糖”のタイミングが、食後30分前後。そのとき体内にインスリンという物質が発生し、糖を肝臓、筋肉、脂肪へ運ぶよう指示を出します。糖が脂肪にたくさん運ばれてしまうと体脂肪が増えるし、筋肉へと運ばれれば筋グリコーゲンが増えます。脂肪に運ばれる糖を減らしたいところですが、私たちは糖の行き先を命令することはできませんよね。ですから、運動によるコントロールが必要なのです。
運動すると、筋肉の中の筋グリコーゲンが減っていきます。食事で摂った糖質はブドウ糖として血液の中にある段階で運動で優先的に使っていくと、体脂肪の方にいく量が少なくなるので体脂肪が増えることを抑えることができます。食後30分前後を目安にジョギングをしましょう!」

Q 食後すぐに運動してはいけないという意見もありますが、問題ありませんか?
「ジョギング程度の軽いなら問題ありません。食後の運動が否定されるケースは、トップアスリートたちが限界まで追い込むようなトレーニングをする場合においてです。糖尿病外来でも食後に運動しましょうと指示されることが多いですよ(※服用している薬によって低血糖を起こす場合があります。疾患がある方は必ず医師に相談のうえ行ってください)」

Q では3つ目の効果、メンタルへの向上効果について具体的に教えてください。
「短期間かつ簡単に達成感を得られるジョギングは、メンタル面に大きな好影響を及ぼします。
誰しも子ども時代は、自分の成長を実感する機会に恵まれます。身長が伸びたとか、テストの点数が上がったとか、四段しか跳べなかった跳び箱が五段跳べるようになったとか。日々達成感を得られるので、あえてやる気を創出させる必要がないんですよ。しかし大人になると達成感を味わう機会ってそんなにないじゃないですか。そこで気力の低下が問題になったりするわけです。
そんな大人が自身の成長を簡単に感じられる手段が、ジョギングなのです。40~50代は特に体の衰えを強く実感する年齢ですが、ジョギングを始めてからはそれが徐々に反転してゆく。先月までは2キロ走るのまでが精一杯だったのに今月は4キロ走れた、といったように走れる距離が長くなっていきます。こうした成長を実感させることが、達成感や幸福感の創出につながっていくのです」

Q なるほど。しかしなぜ、そんなに早い期間で変化を感じることができるのでしょうか。
「ジョギングによって身体に起こる変化は大きく3つあります。それは、筋肉の増強、体脂肪の減少、心肺機能の向上です。この中で最も早く変化を得られやすいのが、心肺機能の向上。数回ジョギングをしただけで、息が上がりにくくなったり、長い距離を走れるようになったりするんです。ジョギングは技術やポテンシャルがなくても簡単に変化を実感できる運動。これほどモチベーションの上がる運動は、他にありませんよね」

ジョギングはダイエットに効果がある?

ダイエットを視野に入れて新しい運動を始める人は決して少なくないはず。有酸素運動であるジョギングにも期待が高まります。しかしゆっくりペースで走るジョギングにダイエット効果があるのか疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

Q ダイエット目的にジョギングを始める人は多いと思いますが効果はあるのでしょうか?
「ジョギングはダイエットにも効果があります。あまり認知されていませんが、ジョギングペースで走った場合とランニングペースで走った場合の酸素消費量はあまり変わらないんです。ダイエット効果を高めたいなら、走る速度を上げることよりも、より長い時間ジョギングをして、消費カロリーを稼ぐことが重要ですね。
また、ジョギングをしていると、コルチゾールというストレスホルモンが活発になるといわれています。ストレスに対抗するだけでなく、脂肪の燃焼や代謝の促進に好影響を与えるホルモンですから、ダイエットしたい人にとっては夢のような相乗効果ですよね。どうせやるなら嫌々行うよりも楽しんで行った方が効果は高いです。
実際、嫌々ジョギングをしている人と楽しんでジョギングをしている人では、脂肪燃焼量が2倍近く違うというデータがあります。辛い思いをしながら一生懸命走っているのに、もったいないですよね」

Q ダイエット効果を得るためにはどのくらいジョギングをする必要がありますか?
「1日30分、週5日程度を目安としてみてください。人にもよりますが体脂肪の減少が目に見えてくるのは3ヶ月目以降になります。
先ほども話題に挙げましたが、食後の運動によって脂肪の蓄積を抑えることができるので、食後にジョギングを習慣づけるのがおすすめです。1日の目標である30分を10分ずつにわけ、朝、昼、夜の3回ジョギングをするとさらに効果が期待できるでしょう。最近まで、“20分以上走らないとダイエット効果がない”という定説がありましたが、実際のところはそのようなエビデンスはなく、多くの専門家が否定しています。
1日に3回もジョギングをするというライフスタイルを難しく考えてしまうかも知れませんが、現在はテレワークをしている人も増えましたから、案外実現しやすいのではないでしょうか。最初は1日10分週2回ぐらいから始めるのでも良いでしょう。徐々に体力がついてくると自然と量・頻度ともに増やせるようになります。
また、ジョギングのダイエット効果を高める要因として時間帯を気にする人もいらっしゃいますが、時間による差は特にありません。それよりも継続できるライフスタイルを見つけることが大切です」

Q ダイエットのためにジョギングを始めても続かないという悩みを抱えている人も多いと思いますが、対策はありますか?
「継続のコツは、一緒に頑張る仲間を作ることです。誰かとジョギングをしている人の方が継続率が80%ぐらい上がるというデータもあるんですよ。仲間とはリアル世界のつながりに限ったことはなくて、例えばSNSなどでジョギングの成果を報告し合うような環境を作ることも同様の効果が期待できると思います。adidasのランニングアプリ『adidas Running app』でも、走った距離や時間をシェアすることができますよね。アプリ内のコミュニティで“いいね”を送り合うフォロワーがいれば、モチベーションの創出になるでしょう」

さあジョギングを始めよう!シューズ選びと、併せて実践したいストレッチ講座

健康面、ダイエット面で効果盛りだくさんのジョギング。お話を聞けば聞くほど、とても魅力的な運動に思えてきます。実際にジョギングをはじめるに前に、どのような準備が必要でしょうか。知っておきたい情報を伺いました。

Q ジョギング初心者のシューズ選びにおいて気を付けるべきポイントを教えてください。
「ジョギング初心者の方は走ることに不慣れであったり、足に体重の負担が強くかかったりするケースが多いので、衝撃の吸収に優れたソールのシューズがおすすめです。『ウルトラブースト』シリーズのように底が厚いタイプは一足目にぴったりですよね。ソールの薄いシューズは本格的なランニングをする人に向けて作られたものが多いと思います」

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「ジョギングのような軽い運動の場合は、シューズの仕様以上におしゃれさを重視しても構わないと考えています。ランニングのように汗をたくさんかくようなこともありませんから、ジョギングのついでにお店に入ったりすることもできますよね。道すがら、カフェに立ち寄ったりパン屋さんなどでショッピングをするという楽しみ方ができます。そういったシーンにも適応するウェアやシューズを選んではいかがでしょうか。
私はよく薄手のパーカーを腰巻にしてジョギングに出かけています。Tシャツの上からさらりと羽織れるので、カフェで休憩するときに重宝しますし、フード付きであれば急な雨を凌ぐこともできます」

▼ジョギング・ランニングにおすすめのジャケット一覧をチェックする
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▼シューズの選び方をもっと知る
https://shop.adidas.jp/running/arblog/article/2020012201/

Q 他にもあると便利なジョギンググッズはありますか。
「ジョギングの際は必ずiPhoneを携帯し、adidasのランニングアプリを起動させています。走った距離や速度をアナウンスしてくれるので、“あと1キロ走ろう!”と自分を鼓舞させるのにちょうどいいんですよね。iPhoneはウェストバッグに入れて走っていることが多いです」

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Q ジョギング前後はどのようなストレッチをすると良いでしょうか?
「ジョギング前は必要ありません。ジョギングが準備運動みたいなものですから。冬季は寒さによって筋肉が縮こまっているので、最初はウォーキングから始まり徐々にスピードを上げていくのでも充分です」

Q ではジョギング後にすべきストレッチを教えてください
「ジョギングの後にぜひ取り入れて欲しいストレッチは3つあります。それぞれ、20~30秒を3セット実施してください。怪我防止や疲労回復に効果的です」

1. ふくらはぎのストレッチ
「ふくらはぎのうち、腓腹筋とヒラメ筋2つをストレッチする動作です。膝をしっかり伸ばし、かかとをなるべく床のほうに近づけることを意識します。ポイントは反動を使わずに、じわーっと伸ばすことです。この動作をきついと感じる場合は、ベンチの上に手を乗せた状態を試してみてください」

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■キツいと感じる方はこちらの動作をチェック!

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2. お尻の裏
「お尻の裏側の筋肉をストレッチします。痛気持ちいくらいまで伸ばしてください。強い痛みを感じる人はベンチに手をつくか、ベンチに座って前屈みの姿勢を取ると、同様の箇所をストレッチすることができます」

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■キツいと感じる方はこちらの動作をチェック!

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3. 前もも
「前ももの付け根付近にある、腸腰筋を伸ばしています。足を上げる時によく使っている部位です。前に出した脚の膝が内側に入らないように意識してください。きついと感じる場合は、伸ばしたい方の脚をベンチに置き、腰に手を当てた状態で前足に体重を載せた動作でも同様の効果があります」

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■キツいと感じる方はこちらの動作をチェック!

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▼ストレッチのバリエーションを知る
https://shop.adidas.jp/running/arblog/article/2020013101/

まとめ

トレーニングにおける幅広い知識と経験をお持ちの中野さんにジョギングの効果を解説いただきました。ジョギングはダイエットなどの表面的な効果に留まらず、免疫力の向上、血糖値コントロール、メンタルの向上といったさまざまな方面にアプローチできる運動です。

無理のないペースで楽しみながら、こんなにたくさんの効果が得られるなら、とても魅力的。ライフスタイルの一部に、ジョギング習慣を取り入れようと、前向きに考えさせられる取材となりました。

そのほかの記事でも中野さんの解説をご紹介しています。併せてチェックし、ジョギング・ランニングへの理解を深めよう。

取材対象者プロフィール:中野ジェームズ修一さん
スポーツモチベーション最高技術責任者
米国スポーツ医学会認定運動生理学士
PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー
フィジカルを強化することで競技力向上や怪我予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。2014年からは、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。早くから「モチベーション」の大切さに着目し、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとしても活躍を続けている。自身が技術責任者を務める東京神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、「楽しく継続できる運動指導と高いホスピタリティ」が評価され活況を呈している。

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