ランニング
adidas Runnersコーチに聞くフルマラソン用練習メニュー 完走やタイム更新のためにはどうすれば?
ランナーなら一度は挑戦してみたい、42.195kmのフルマラソン。しかしどのように練習をすれば完走できるのか。もしくは、ベストタイムを更新できるのでしょうか。adidas Runnersコーチの深浦祐哉さん にフルマラソンに向けた練習メニューについて詳しく伺いました。
目標タイムは関係なし マラソンはスタミナとスピードのバランスが鍵
―初めてフルマラソンに挑戦する人は、どのようなトレーニングをすればいいのでしょうか。
深浦祐哉さん(以下、深浦):フルマラソンは、どのくらいの距離を走ってきたかが成果につながりやすい競技です。初挑戦する人は、まず普段の運動量を増やしましょう。
レースの3カ月前までは走るペースを気にせずにジョギングで、フルマラソンを完走するための脚づくり、スタミナづくりをすること。ビギナーの方なら、ウォーキングを交えてもよいでしょう。
そして、徐々に走る距離を伸ばしていき、1〜2カ月前はレースを意識して、20〜30kmといった一度に長い距離を走る練習を組み込んでいくのがいいです。その際ペースはゆっくりでいいので、しっかり最後まで走り切れることを意識しましょう。
―一方で、ベストタイムの更新を狙う人はどうでしょうか。
深浦:マラソンのタイムを目指すならスタミナだけでなく、スピードとのバランスが問われます。スタミナづくりができたら週に1~2回、スピードやタイムを意識したポイント練習を取り入れてみてください。
―ポイント練習とは、どのようなものでしょうか。
深浦:走力向上のための、ちょっときつい練習と言えばいいんですかね。要は“がんばる”練習です。ジョギングは、その日の体調に合わせて心地よいペースでよいのですが、ポイント練習は目標から逆算する形で距離やペースを設定して走ります。
例えば、フルマラソンの目標タイムが3時間の場合、レースペースである4分15秒/kmで、20km程度走るといったように。目標達成のために、質の高い練習でしっかり体に負荷をかけていくわけです。
―そのほか、レースに向けて取り組むべきトレーニングはありますか。
深浦:トレーニングはもちろん大事ですが、より良いトレーニングを行うための体のコンディションを整えることも意識してほしいです。暑い中でのレースやトレーニングのために、例えば夏場にエアコンを使わずに生活するといった極端な方法では、体調を崩しかねません。なので、快適さを保ちつつも、外の環境と極端な差を生まない温度設定で過ごすことも大事です。
トレーニングを行う時間もわざと暑い時間帯を選んで、体をその気温に順応させる、メンタルを鍛えることもできますが、それで体調を崩しては元も子もないでしょう。夏は日が落ちても都心部は熱がこもるので、快適にトレーニングを行うためには早朝がオススメです。
レース直前期に行うべき練習は?
―レース直前期には、どのような練習がよいでしょうか。
深浦:よく言われているのが、レース3週間前の週末に30km、2週間前に20km、1週間前は走っても10kmくらいと徐々に距離を落としつつ、レースペースを意識した練習でレースに向けてピークを合わせていく方法。疲労が残りやすい人なら、4週間前に30kmほどの練習を実施してもいいと思います。
1回のトレーニングにおける疲労を抑えつつ、質の高い練習でスピードを意識することによって、心肺機能や筋肉の状態を高く保つことができる。レースに向けて体のセンサーを研ぎ澄ませていき、自分の体調を考慮しながら、妥協ではなく戦略的にトレーニングを調整していきましょう。
―レース直前に練習量を落とすのは、不安に思う気がします。
深浦:気持ちはすごくわかります。練習が順調にできていない人ほど、練習量の少なさに不安になりがちですが、直前でがんばってもただ消耗するだけ。当日のレースで自分なりの最大のパフォーマンスを引き出すには、体調を整えることが何よりも大事です。はやる気持ちはレースまで溜めておきましょう。
―タイムの更新を目指すランナーの場合、一般的に「サブ3」や「サブ4」など目標タイムで分けられますが、それぞれの目標タイム別で練習法は変わりますか。
深浦:目標タイム別に、練習法を分けることはありません。初心者であれば、ある程度走る量を増やしたり、ペースを上げる練習をこなしたりすることで、タイム更新ができます。しかし、ある程度走力がついてくると、そうトントン拍子にタイム更新はできなくなります。
その時、目標達成のために足りないのは何なのか。心肺機能なのか筋力なのか、それともフォームなのかは、人それぞれ。なので、「サブ3」「サブ4」を目指すのに、このトレーニングを行えば確実、なんてものはありません。
―壁にぶつかったランナーはどうすれば乗り越えられるのでしょうか。
深浦:誰でも必ず壁にぶつかります。そのときに自分の限界だと思わずに、愚直に同じトレーニングを続けるか・変えるか、内容に偏りがないか、今の自分に不足しているものはなにかを多角的にアプローチをすることで、ブレイクスルーのチャンスを見つけることができます。むしろ、そんな成長の過程を楽しみ、成果につなげられるところこそ、多くの人がフルマラソンにハマる理由ではないかなと思いますね。
まとめ
走る習慣が身につき、ある程度走力がついてきたら、フルマラソンに挑戦してみてはいかがでしょうか。深浦さんが話したトレーニング方法を参考に、レースに挑んでみてください。
adidasでは、マラソン初挑戦者向けのランニングシューズとして、Solar(ソーラー)シリーズ を、中級者向けには「ADIZERO BOSTON (アディゼロ ボストン)」をそれぞれ展開中。マラソンに挑戦する際はぜひランニングシューズ選びも検討してみてください。
取材対象者プロフィール:
深浦祐哉さん
GO UP! 代表として市民ランナーへの指導を行う。
デュアスロンでは11年間連続日本チャンピオンを誇る。
(取材:杉山大祐 執筆:小林有希 撮影:藤原慶 編集:ノオト)