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マラソンのタイムを向上させるには? adidas Runnersコーチに聞くトレーニング方法

どんなに走り込んでも、なかなかフルマラソンのタイムが上がらない。ある程度走力がついた中級ランナーも、こんな悩みで頭を抱える人が多いのではないでしょうか。そんな方に向けて、adidas Runnersコーチの深浦祐哉さん に、停滞期にこそ実践したい、マラソンのタイムを延ばす練習方法について詳しく伺いました。

マラソンのタイムを向上させるために必要な3つの要素

―マラソンのタイムを上げるには、何が必要なのでしょうか。

深浦祐哉さん(以下、深浦):一般的に、ランニングのパフォーマンスを向上させる要素は、「VO2Max(最大酸素摂取量)」「AT値(無酸素性作業閾値)」「ランニングエコノミー」の3つと言われています。

―それぞれ、どのようなものか教えてください。

深浦:VO2Maxとは、体内に取り込んだ酸素を有効に活用できる量で、この値が高いほど有酸素能力が高いことを示します。AT(Anaerobic Threshold)値は、「無酸素性作業閾値」とも呼ばれ、運動中に一定の運動強度を超えると、体内に発生した乳酸の処理が追い付かず急激に溜まってしまい体を動かしづらくなります。つまりAT値を引き上げることができれば、より高い運動強度でも走り続けられるわけです。

ランニングエコノミーは、いかに無駄なエネルギーを使わず効率的に走れるかですね。わかりやすい例でいうと、ランニングフォーム。がむしゃらなフォームで走った場合、スピードを出せても、エネルギーを余分に消費します。効率のいいフォームを身につけることが、燃費良く、経済的なランにつながるのです。

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―それぞれどのように鍛えるのでしょうか。

深浦:VO2Maxを鍛えるには、インターバル走が適しています。例えば、1000m×5本というメニューの場合1000mをVO2Max の95%程度の強度で走り、2~3分の休憩を挟んで、それを繰り返すという練習方法です。

ただ便宜上、距離をトレーニングの基準に設定していますが、1000m走るのにかかる時間は、ランナーごとにそれぞれ違うでしょう。3分でいける人もいれば、5分以上かかる人もいる。

VO2Maxを刺激するには走り始めから2分ほど要し、5分以上になるとその強度の維持が困難と言われているので、距離ではなく時間を基準にした「5分間走」といったメニューにすると、走力関係なく効果的に最大酸素摂取量を高めることができるのでオススメです。

―最大酸素摂取量が増えると、どのように体は変わるのでしょうか。

深浦:体がたくさんの酸素を利用でき、エネルギーを生み出せるようになるので、有酸素運動(長距離走)におけるパフォーマンスが高まります。以前と同じスピードで走っても楽になり、息が上がらなくなるのを実感できるでしょう。

―続いて、AT値はどのようなトレーニング方法で向上できるのか教えてください。

深浦:30分程度のペース走(ペースをキープして走る練習)が基本的なメニューになります。万全にコンディションを整えた状態で約60分間疾走できるペースが適正な強度と言われているので、練習では「30分は維持できるかな」というペースで、走力に合わせて距離を設定するといいです。

乳酸=疲労物質のイメージが強いですが、AT値より下の運動強度であれば、乳酸は体内で代謝されてエネルギーに変わります。乳酸を処理し切れなくなるタイミング=AT値なので、AT値を上げて、乳酸を処理できる運動強度(スピード)を高めれば、長時間走るフルマラソンに効果的なんですね。

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―ランニングエコノミーについてはどう改善していけばいいのでしょう。

深浦:走る姿を動画で撮影したり、ほかの人に見てもらったりして、自分のランニングフォームの特徴を客観的に把握することが大事です。そのうえで、フォームを意識した練習をします。

練習強度が高いと、苦しさが先行してフォームを意識しづらくなるので、200〜400mの短い距離で、理想のフォームを定着させます。ポイントとしては、スピードをきちんと出しつつ、フォームを乱すほどはスピードを上げないことです。

―短距離と長距離では、フォームが別物のように感じますが……。

深浦:良いフォームの型は、大きくは変わりません。短い距離でダイナミックな美しいフォームを実践できたら、そこから長距離用にコンパクトにカスタマイズしていき、動きの引き出しを増やします。短い距離からフォームを整え、保てたら、1km、2km……と距離を伸ばしていきましょう。

―どのようなフォームが理想的なのでしょうか。

深浦:性別や年齢、骨格や筋肉量も人それぞれなので、100人いたら100通りのランニングフォームが存在し、“絶対”というフォームはありません。

ただ言えるとしたら、日本人に多いとされる後傾気味の骨盤は、重心をスムーズに前に移動することができず、例えるならサイドブレーキを引きながらアクセルを踏んだ車と同じ状態です。反対に骨盤が前傾し過ぎていると、股関節周りが上手く使えなくなります。どちらもニュートラルな骨盤位姿勢に戻すよう意識しましょう。

また、肩周り(肩甲骨周り)はクセとして出やすいので、猫背の人は胸を開き肩甲骨を寄せるようにて、逆に肩甲骨を寄せすぎの人は肩の位置が真横にくるようにしてリラックスを心がけましょう。

タイム向上のためにトレーニングメニューを見直す

―マラソンのタイムの壁にぶつかった経験は誰しもあると思います。そんな人に向けて、ご紹介いただいた3要素のほかに、アドバイスがあればお願いします。

深浦:フルマラソンを始めた頃は、強度を問わず走る距離を伸ばし、脚の耐久性を上げるとタイムも伸びますが、いずれ壁にぶつかります。そのとき、盲目的にトレーニングに取り組んでいないかを見直すことが大事です。

例えば、所属するランニングクラブのメニューをこなすだけで、練習した気になっていないか。もちろん、仲間がいるので一人ではなかなか取り組めないメニューができる等、練習会に参加するメリットは大いにあります。ただ、そこで出された練習メニューが必ずしもその人にとっての正解とは限りません。

今のタイミングで自分に必要なメニューはなにか。トレーニングを見直すときに、3つの要素は自分の成長を手助けするヒントになります。走り方や意識の方向を変えるだけで、年齢が上がっても十分にパフォーマンスを上げることが可能です。

まとめ

「マラソンのタイムがなかなか向上しない」「特定のタイムの壁を感じた」などの悩みが出たら、今回紹介された3要素を参考に、トレーニングメニューを見直してみてはいかがでしょうか。

取材対象者プロフィール:
深浦祐哉さん
GO UP! 代表として市民ランナーへの指導を行う。
デュアスロンでは11年間連続日本チャンピオンを誇る。

(取材:杉山大祐 執筆:小林有希 撮影:藤原慶 編集:ノオト)

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